case 症例紹介
下顎前歯部(43~41)にGBRとCTGを行った審美補綴のケース
【治療内容】
42 自然挺出+GBR(骨の再生治療+EMD加算)
42 CTG(歯肉移植を用いた顎堤増大術)
43-41 ジルコニアセラミックブリッジ
【治療期間】 約2年(中断期間あり,その他の治療内容も含む)
【副作用】 歯周炎の再発、ジルコニアの破折等
【治療費用】
GBR(EMD加算):13.2万円
CTG(1歯分の範囲):11万円
ジルコニアセラミックブリッジ:39.6万円(1歯あたり13.2万円)
※画像の掲載に関し、ご本人様の同意を得ています
※治療期間中は仮歯(有料)が入っており、審美的・機能的に問題なく過ごすことができます
※治療費は不定期に変動します
初診時 口腔内写真
近医で歯周病を治療しても改善がみられないため、福山市外からご来院されました。
全顎的に歯周病の状態は悪く、特に下の前歯の歯肉が腫れて、ひどく悪いことがわかります。
初診時 パノラマX線写真
全顎的に歯槽骨の吸収を認め、重度の歯周病です。
特に歯肉が腫れている42(右下の2番、黄色矢印)については、歯槽骨が根の先まで全周にわたって吸収しており、『痛みがあって咬みづらい』という症状がありました。
歯周病治療や補綴治療など、全顎的な治療を行いましたが、今回の症例紹介では、右下41-43部に焦点を当ててご紹介します。
41ー43部の治療方針として、
①42自然挺出ののちソケットプリザベーション+GBR+エムドゲインによる歯周組織再生療法
②42抜歯部CTG
③41-43ジルコニアセラミックブリッジによる補綴治療
という流れで治療計画を立てました。
デンタルX線写真で見る42自然挺出の経過
レントゲンからも明らかなように、42(右下2番)は歯根の全周にわたって骨吸収が進行して動揺しており、抜歯すべき歯なのですが、いきなり抜歯をしてしまうと、骨吸収がさらに進んで骨が大きく凹んだまま治癒してしまいます。骨が凹んだままだと、歯肉も凹みます。歯肉が凹むと、最終的に入れるブリッジの形は凸状に伸びたような形態となり、清掃がしにくく審美性の劣るブリッジになってしまいます。これでは歯周病が再発する原因となってしまいます。
したがって、骨吸収を抑えながら抜歯をする必要があります。
そこでまず、42は自然挺出をしました。方法は、神経の治療をして、上の歯と咬まないように削合します。周囲の骨が溶けているので、〈上の歯と咬まない〉という条件を与えるだけで、歯が自然に伸びてきます。歯が挺出すると、根の先端部分の骨が自然と造られてきます。
《骨を造りながら歯を抜く》イメージです。
このように、抜歯前に歯を挺出させることによって、抜歯時の骨吸収を軽減させるとともに、抜歯時の痛みも抑えることが可能となります。
42 ソケットプリザベーション+GBR(エムドゲイン使用)後 口腔内写真
約6か月間の自然挺出後、42を抜歯しました。抜歯と同時に、GBRという骨を再生する手術と、エムドゲインを用いた歯周組織再生療法を合わせて行いました。
(自然挺出を待っている間は、他の部位の治療を順次行いました。)
写真は、GBR後のものです。中央の歯肉はまだ凹みが残りますが、42部の骨を大幅に造るとともに、41、43の歯周組織を再生することができました。それは、同部位の周囲の歯肉のライン(高さ)を見ていただくとよく分かります。抜歯した42部の周囲の歯肉のラインが、両隣りの41、43部の歯肉のラインと揃っています。
ここまでで、歯周病によって失われた骨と破壊された歯周組織の回復が達成され、最終的にブリッジを入れるための土台が整いました。
42 CTG(顎堤増大:凹んだ歯肉を膨らませる手術)
土台を回復させた次は、歯周組織の一番表層である、歯肉の回復です。抜歯した部位の中央の歯肉はまだ少し凹んでいました。この、凹んでいて弱々しい歯肉に対して、ボリュームと強さを出すため、CTGという歯周形成外科手術を行いました。方法は、上顎の歯肉の一部を採取して、凹んだ歯肉の内部に滑り込ませるように移植します。移植片を内部に滑りこませ、元々あった上皮で覆うため、見た目の仕上がりがとても自然です。つぎはぎ感は出ません。今回は前歯部で目立つ部位なのでCTGを適応しました。
健康で丈夫な歯肉を移植することによって、歯肉の厚みを回復することができ、自然体で綺麗な形のブリッジを作ることができます。さらに、少々のブラッシングではすり減りにくくなり、歯周病の再発を予防することが可能となります。
審美性と清掃性を兼ね備えた、健康的な歯肉へと回復します。
手術部位の治療前後の比較 デンタルX線
左:治療前デンタルX線写真(2020年9月)
42は神経が死んでおり(失活歯)、歯槽骨は根尖付近まで全周にわたって吸収しており、保存困難な状態でありました。
右:治療後デンタルX線写真(2023年1月)
42の抜歯後の歯槽骨再生と、43,41の歯周組織再生が達成できています。
治療後 パノラマX線写真
41-43部の歯周病で溶けていた歯槽骨が十分量にまで回復しています。
治療後 口腔内写真
ご自身の歯:水色
ジルコニアセラミックブリッジ:黄色
41‐43部の歯肉は、ボリュームがあって健康的な薄ピンク色の歯肉に回復しています。
ジルコニアセラミックブリッジはご自身の歯の形態、色彩、歯列と調和していて、左右対称性も抜群です。
機能的にも審美的にも患者さまの満足のいく治療結果が得られました。
長期にわたる治療でしたが遠方から通院してくださりありがとうございました。また、資料掲載へのご協力を賜り誠にありがとうございました。